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Diary #2

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焔の月 3日目
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細枝の月 18日

きのうはとてもさむく、みなでもうふをよせあってねむりにつきました。
夜中に、エミーリエがわたしをおこし、外を見てと言いました。
おちばの上がうっすらと白くなっていました。
冬のとうちゃくです。
エミーリエはとてもよろこんで、はだしで出て行ってしまいました。

きゅうなことでしたので、エィヨースさまたちは、朝から冬じたくにおわれています。
今年もさむいのでしょうか?

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フリードリヒとアンジェリエルが辿り着いた先は、
スティルフと呼ばれている街だった。
ここはとても活気があり、人の流れも多い。
フリードリヒはこの街の状況なら例え追手がいたとしても
撒くことが出来ると判断し、二人はここで情報収集を行うこととした。

今この街のある世界は未曾有の危機に晒されており、
他の「分割世界」へ救援依頼を出したということ。
そして、それに応じた者たちがスティルフへ一堂に会しているという状況であること。
救援に来た者達は登録を行うことで、依頼を受け報酬を得ることが出来るということ。

いくつか得られた情報の中でも、
特に「依頼をこなす事で報酬が得られる」ということは魅力的だった。
ここへ着てからというものの、環境も場所も通貨も分からなかったが、
そういうシステムがあるのであれば路銀を稼ぐことが出来る。
この街の喧騒は時に心地は良いが、一ヶ所に留まる訳にもいかない。

この世界が全く別の世界であることは分かったが、
自分たちがまだ確立されていないはずである
次元転移の魔法により世界を移動出来たということは
その手段を追手も使える可能性があるということを示していた。
ある程度の準備を整えたら、場所を転々とするしかない。
依頼というシステムは二人にとって実に都合が良かった。


          *          *          *          


二人は救援者の登録を行うため、その場所へ向かった。
救援依頼を受け取った者がほとんどなのだろう、一際、人が集まっている。

もしかすると次元転移が成功したのは、
この世界の悲鳴に共鳴したこともあるのかもしれない。
アンジェリエルは記憶の片隅でそう考えながら
登録に際して必要な情報を確認していった。
そしてある項目に差し掛かり、隣にいたフリードリヒを見上げる。

「どうした?」

フリードリヒは隣の少女に見上げられ、何か問題点でもあったのかと疑問に思った。

「姓は、ある方が安全でしょうか」

少女を止めていたのは、氏名であった。
彼女には姓がなかったのだ。
フリードリヒはその質問は最もだと感じながらも、どう応えるべきか悩んだ。
彼には、姓がある。

「難しい判断だな…だが、ある方が良いかもしれん。フォーゲルベーレ、と名乗っておけ」

アンジェリエルは一瞬驚いた表情をしたが直ぐに、はい、と短く答えると登録を終えた。

「仮の名をつけるにしても、呼ばれて直ぐに反応出来なけれ意味がない。
俺の姓ならば呼び慣れているだろうと思ってな。
不満はあるかもしれないが、これ以外思いつかなかった」
「いいえ…」

アンジェリエルは小さく首を振る。
それから、彼には聞こえただろうか?
とても小さな声で続けた。

「…嬉しく思いました」

遠い過去の中でしかもう生きてはいない父と母と幼い弟。
自分の家族を表する名はあったのか、今となっては確かめる術もない。


          *          *          *          


登録を行った場所から離れ、二人はスティルフを探索することとした。
既に受けられる依頼は幾つかあったが、これからの道筋を決めなければならなかった。

「露店を抜け出した林檎の退治、か。これは、先が思いやられるな…」
「巨大化したハムスター、ですか。一体どれくらいなのでしょう」
「退治依頼が出る程だ、そう簡単には触れないと思うぞ」
「……」

フリードリヒは登録所で貰った地図と依頼とを確認しながら、
その内容に頭を抱えそうになった。

隣にいる少女は、ハムスターへの想いを馳せているのか、
先ほどから地図上の同じ地点を見ている。
まだ幼さを残す教え子が、経験の無い中で追っ手からここまで逃げおおせたことは、
概ね良くやってきたとフリードリヒは感じていた。
しかし、この先も同じだけ楽観的な評価を与えることは出来なかった。
フリードリヒはアンジェリエルの成長に期待をしていない訳ではなかったが、
まだ子供である彼女に対してはそういう種の期待をしたくない気持ちもある。

戦力として彼女を数えることは危険かもしれないとフリードリヒは考えていた。
自分たちと同じく別世界からの「救援者」としてこの街にいる者ならば、
勝手の知らぬこの地で協力関係無いし連携を取れる相手がいるかもしれない。
依頼をこなすという共通の目的があるなら与しやすいだろう。

フリードリヒはそう考えながら、
地図から目線を自分へと移したアンジェリエルに行動を促し、大通へと足を進めた。


          *          *          *          


「教官…いえ、フォーゲルベーレさん」

アンジェリエルは足を止め、数歩前を歩いていた男に声を掛けた。

「自分を名字で呼ぶ奴があるか。フリードリヒで良いと、言っただろう」
「はい…すみません、フリードリヒさん」

フリードリヒは眉を顰めながら立ち止まる。
アンジェリエルの瞳は真っ直ぐに見つめていた。

「どうした?」
「この先、私だけで大丈夫でしょうか?」

「…どういうことだ?」

間を置いて、フリードリヒはより一層眉を顰めた。
少女の瞳は真っ直ぐのままだ。

「私には、まだ実戦の経験はありません。
フリードリヒさんのお力で何とかここまで来ることができました。
ですが、この先はそうは行かないと考えています」

「私も、自分に出来ることはそれ以上にします。
それでも…恐らくフリードリヒさんの手を煩わせ…」
「まあ待て」

珍しく長く紡がれていく少女の言葉を、フリードリヒは語気を強めて遮った。
アンジェリエルは、左の眉に無意識に力をかける。

「お前の言うことはもっともだ。だが、この地で不慣れなのはお互い同じだろう?」

フリードリヒはアンジェリエルを不安にさせまいと、無理に肩肘は張らなかった。
この少女は、そういうことに敏感だった。

「信用に足る相手がいれば同行を申し出る、それは俺も考えていた。
此処に居る人間が全て俺達に友好的とは限らんが、
俺達と同じ様に異世界から来た者も少なくない。
状況が似通っていれば、一人くらいはいるだろう」

アンジェリエルはただ真っ直ぐに彼の言葉に耳を傾けている。
フリードリヒは息を軽く吐くと、こう続けた。

「アンジェリエル、くれぐれも背伸びはするな。自分の身の丈を知れ。
一つづつ積み重ねるんだ。そうする事で、俺は今まで生きて来た。
お前に出来そうな事は遠慮なく割り振るが、何かを自発的にやる時は必ず相談するんだ。
いいな? 」

フリードリヒは、その大きな手をアンジェリエルの頭に載せると
一度だけ軽く撫で、彼女に言い聞かせた。
アンジェリエルは離れていく大きな手の平を、
冬空の切れ間に覗く陽の様に眩しそうに見つめている。
フリードリヒの手が彼の傍らに戻ると、彼女ははにかみながら答えた。

「はい」

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Special Thanks.
ENo.1894 フリードリヒ=フォーゲルベーレ
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