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Diary #7

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焔の月 8日目
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セルフォリーフに来てからというもの、
アンジェリエルは毎日、新しいことと出会ってばかりだった。

初めてこの地で目を開けた時は戸惑いを覚えた。
それまで居た場所とは明らかに異なる空気の質感。
「別の何処か」へ来たという発想は出来たが、
頬に触れるそれが全く別の世界のものだとは考えられなかった。

アンジェリエルのいた世界では、お伽噺に出てくる程度で、
別の世界が存在することは一般的に考えられてはいない。
次元転移と呼ばれる方法は、学者の間では理論として存在している
ものの確立されておらず、その先に本当に別世界があるかどうかということは
誰も証明できていないことであった。

アンジェリエルよりも見聞のあるフリードリヒもこの場所に見覚えは無いようで、
アンジェリエルもまた自身がそれまで不自由なく使えた術が
見えない何かに引っ掛かる感覚を覚え、直感的に全てが異なるのだと悟った。
二人はここは異世界であると一つの仮説を立てた。

それは願望であったのかもしれない。

それまでと変わらず、二人は身を隠しながら一つの街へ辿り着くと、
仮説は確信となった。
この世界にはセルフォリーフという名がついていた。
世界に名前がある―
自分がそれまで居た世界では、世界を識別する必要がなかったため名前は存在しなかった。
しかし、ここには名前のついた世界がある。
他に認識されている世界が存在しているのだろうか。
アンジェリエルは新鮮な驚きに包まれた。

二人が着いた街はスティルフと呼ばれており、
そこで二人は六人の人物と行動を共にすることとなった。
しかし、その内の誰一人として自分達と同じ場所、
世界と呼ばれるそれから来た者はいなかった。
それは、アンジェリエルにさらなる驚きを与えた。

同行者の内、レミィ、兼光、青はそれぞれアンテセラと呼ばれる世界から来ている。
この世界はセルフォリーフともアンジェリエルたちのいた世界とも
離れた機械文明を持っている様だった。
後に分かったことだが、この世界からセルフォリーフへ来ている者は多く、
またリンクスという機械を携えていた。
機械というものをまともに見たことがないアンジェリエルにとって、
それはあまりに鮮烈だった。
さらにリンクスには物理的な力だけでなく、魔法も利用されているという。
高度な技術と応用力に、次元転移も容易であることは簡単に納得ができた。
そしてその力に、アンジェリエルは興味と共に恐ろしささえも感じている。

ハイアシンスとテテは、やはり別の世界から来ていた。
同行者の中では一番近しい世界ではないかと、アンジェリエルは感じている。
テテは小さいながらに武器の扱いに長けており、普段はとても少年らしいが、
いざ戦闘となると急に大人びた表情を見せる。
その間に、ハイアシンスは何をしているのかと、
たまに思い出してみるアンジェリエルだったが
……テテがハムスターに突進していくのを諌める場面の記憶が一番強かった。

そして六人の中で一際異彩を放っているのが、なーなと名乗る少女。
見た目はアンジェリエルよりも上で、成長度合いもかなり上だった。
彼女もまた機械と共にあるが、それはアンテセラの物ではないらしく、
セルフォリーフの文化とも馴染まない印象を受ける。
手先が器用であること以外は、言葉を知らないのだろうか、
彼女の口から語られることは無く、その出身もまだ分からなかった。
同行者の中ではテテと一緒にいることが多い。

驚くべきことに、ほとんどがそれぞれ別の世界から来ていたのだった。
アンジェリエルにとってそれは歓迎すべきことでもあり、
同時に不安を覚えるべきことでもあった。
次元転移という方法が、こうも溢れていたとは考えつかなかったからだ。


          *          *          *   


アンジェリエルはエスタという街に到着していた。
街並みにどこか懐かしさを覚え今日の日記に書き終えた所で、右手の裾に目をやった。
アイゼンプルヴァーへの配属が決まったら折りに支給された、
根の城出身者であることを示すローブ。
袖に施された刺繍が、 自分が何者であったのかを無言で指し示している気がした。

根の城を出た直後は替えの余裕も無かった。
また、これは戦場に来ていく装束でもあり、
それなりの防御力もあった。
市井の者でこれの意味が分かる者はまずおらず、
地味なデザインなためか目立つことも無かった。
フリードリヒも特に気にしていない様だったため、そのままにしていたのだ。

しかし、セルフォリーフに来てから二度ほど服装のことに触れられた。
幸いに関心は別の処にあったようだが、
予想していなかった反応に緊張を覚えることとなった。
今まで何も無かったことが幸運だったのかもしれない。
もしそれが追手であったなら―

アンジェリエルはペンを置いたことで空になった左手で、右裾の紋章を隠す様に握りしめた。

偶然の事故としか説明出来ない事象により次元転移をしたことまでは
幸いだったのかもしれないが、完全な安息がもたらされた訳ではなかった。
あまりにも無防備だったとアンジェリエルは恥じると同時に
以前、黒いドレスに身を包んだ女が言っていた言葉を脳裏に浮べた。

「大佐殿は、全く『女の子の気持ち』というものを理解されていないのだね?」

その言葉の真意がようやく分かった気がした。
根の城にいた時には考えられない様な出来事の連続が、
自分の立ち位置を忘れさせていたと言っても言い訳にしかならない。

今、自分は一人ではない。

「…先に対策をしておいた方が良さそうですね」

アンジェリエルは誰もいない空に向けて話しかけた。
大通りに良さそうな店があったー
アンジェリエルはペンと日記を荷物に仕舞うと、軽い足取りで向かっていった。
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