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Diary #6

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焔の月 7日目
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雪枝の月 30日

今年もエィパッタシンの日が近づいて参りました。
ヌーナの方をお話が出来る日ですが、私はあまり得意ではありません。
今年は何をもらおうかと、周りの子たちはそればかり気にしています。
私はもうこのノートも終わりが近づいてきたので、
今年は新しいノートとペンをもらおうと考えています。

去年はエミーリエと、味のちがうおかしをもらって交かんしました。
エミーリエは今年は何を選ぶのでしょうか?

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アンジェリエルはいつも日記をつけている。
毎日欠かさずつけていた訳ではないが、母語の筆記練習も兼ねて
根の城〈タイルニス〉に居た時からの習慣だった。
表紙が古い色を帯びた日記帳の一つを手に取りながら丁寧にめくっていく。
タイルニスを後にする時、荷物になることは分かっていたが自分がそこにいる様で
置いていくのも燃やしてしまうのも忍びなかった。
手にしているのは二冊目の日記帳で、
アンジェリエルはそれが自分の手元に来た時のことを思い出した。

タイルニスでは年に一度だけ、少女たちは商人の持ち込んだ中から好きな物を買うことができた。
買うと言っても、金銭を持たない彼女たちは欲しい物を指定するだけで
実際の支払いなどがどうなっていたかは分からなかった。
それは年に一度の楽しみの前では些細な事だった。
ルラープと呼ばれる場所に一堂に会す品々を見て、少女たちはいつもため息とともに色めき立つ。

その年、アンジェリエルが三年間愛用していた日記帳はその空白を全て埋まってしまった。
年長の物から譲り受けた物であり、深紅の果実色をしたそれをとても気に入っていたが、
書き込めなくなっては仕方のないこと。
アンジェリエルは新しい日記帳を貰おうと決めていた。

口承や舞踊で伝えられるタイルニスにおいて、書くという行為は重要視されていない。
そのため、筆記に必要なものが常に手元にある訳ではなかった。
他の子が上等な菓子や小物入れ等、可愛らしいものを選ぶ中、
アンジェリエルは前の物と似た色の日記帳とペンのセットを選んだ。

人の良さそうな商人から日記帳を受け取ると、アンジェリエルは改めて周囲を見回した。
ルラープに出てから一つ気がかりだったのは、
その場に唯一の友人と呼べる少女の姿が見当たらなかったことだった。
彼女はエミーリエという名の、淡いマリーゴールド色の髪の少女。
アンジェリエルより二歳年上ので、しかしタイルニスに来たのは同じ年だった。
彼女もアンジェリエルと同じアイゼンパルヴァーの領内出身だったため
偶然、言葉が通じる者がいて互いに驚き、そして友人となるのに時間はかからなかった。

元々引っ込み思案なアンジェリエルとは対照的に
エミーリエは物怖じしない性格で、とにかく活発で明るかった。
タイルニスでは浮いてしまうその性質を、本人が気にすることはなく、
アンジェリエルはそんな彼女をとても頼もしく感じていた。
二人はタイルニスに来てから、時間の許す限り一緒にいた。
ラト二に張り巡る枝に登っては怒られ、
夜中に星を見に普段は出入りを禁じられていたルラープへ忍びこんたこともある。

与えられたラトニの部屋からは見えない星が作り出す景色に、
声が出るのも忘れてため息を付き、そして二人だけで励ましあった。
「ここを出る日が来たら、別の場所で一緒に星空を見よう」と。

それぞれの資質が異なっていたため数年前より別れて学んでいたが
年に一度のこの日は、顔を合わせられる数少ない機会だった。

具合が悪いのか?

アンジェリエルの心は、足が地に付かなくなった様に揺れる。
しかし新雪の上を裸足で駆けていき顔色一つかえない彼女のこと、
その可能性はすぐに記憶により否定された。
そしてそれ以外の理由が見つけられなかったことで、微動は波紋を引き起こす。

自分付きのイラムスは何か知っているのだろうか?

他の子らがまだ、名残惜しそうに互いに話をしている中、アンジェリエルはその場を後にした。


          *          *          *   


「エミーリエ?」
「はい、エィレルを学んでいるカタです」
「何故、それのことを君が私に聞くのかね?君はエィッカのイラムスだろう」
「………」
「予想するに、カタに何か尋ねられて返答に困った、といった所か。
 一つ、教えておこう。君はまだイラムスになって日も浅い様だが、
 カタらにはあまり情はかけてやらない方が良い。それがお互いのためだ」
「…何故ですか?私はイラムス様には良くしていただきました。
 それを私が同じ様にすることの、何が許されないのですか」
「君の言うイラムスは、自分のカタ以外の事情をも覗きこもうとしていたのかね?
 つまりは、そういうことだ。
 君は君の両の腕で出来ることをするだけで良い。
 それ以上のことを、今の君が出来るとも、思えん」
「……最もです。失礼を致しました」
「分かれば良い。早く戻り給え」
「失礼いたします」



「ああ、そうだ」
「はい?」
「もう一つ、教えておこう。ソゥらから報告があったことだ。
 今年のタマルは出来が悪く不作だったのだ」
「……それが…」
「故にイチュー様方はエィプライシィを行うことを決定された」
「………まさか」
「私が知っていることはそれだけだ。さぁ、行きなさい」
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